もうはやいもので気が付けば年の暮れ。
思い返せば世相を横目に、去年や一昨年と同じく担当する授業の資料作成にあけくれる日々が続き、知らないうちに先生として振る舞う姿が板についています。
私は今年これを達成した、乗り越えた、と言えることがあるか記憶を遡行させると、ひとつだけありました。
2016年が始まりずいぶん経過し夏前になってようやく作った油彩画が1枚あります。
油絵の描き方はひとつではなく、工夫次第でタッチはさまざまに変わります。
それは接着剤の存在ぬきには辿り着けない手仕事でした。
紙を貼ることができる油性の絵具(またはメディウム)は存在しますが、透明度の高く、
色がついていない絵具はありませんでした。それゆえそうした接着剤は自身で作り上げなけれならず、(なぜ私なんかが手作りできるものが売ってないんでしょうか?)、
2016年1月から10月のあいだに、サンプルを作り続けた結果、近いものができました。
後から数えれば160回のサンプルをつくったことがわかり、
つまり成功まで159回は実験失敗したことになります。
ここまで失敗すると人はなにか貴重なものを作ってしまったと解釈するものです。
しかしながら本心では日々物質的安定性を確かめることの不正確さからもやもやした気持ちで
使う日々です。
実際にそれで作った拙作の透明な油絵具です。
下に描いたペンの跡が透けています。厚みは1cmくらいあるだろうか、
というところで、透明度は完璧ではないものの許せるレベル。
粘性、コシは十分な描き心地。色が変色しないように調合も配慮した。
ナイフで押しつけたらこんな感じ。盛り上がり(インパスト)があり、コシの強さも感じる。
これを作った後に知り購入した青木先生の著書にも、近しい成分の記載がありました。さすがですね。材料技法の新しいバイブルである青木先生の著書は目から鱗なものばかりです。
よくわかる今の絵画材料―絵画素材の科学 青木 芳昭
そうしたなかで、いくつか副産物的に得られた情報もあります。
リンシードの乾燥後の黄変の具合はネットにもそれほど情報がありません。
私の環境では、リンシードは恐ろしいほどそれは黄色く変色し、また
太陽にさらすことで、びっくりするくらい元の色に戻るようなケースが
見られました。これって黄変なの?変色とはいわないんじゃないの?と
いまでも疑問です。
リンシードで黄色くなった絵を責めないでやってください。
きっともとにもどりますから。
さて、実際にメディウムでつくった拙作も。
下記がそれです。タイトル「今ここに無き姿」。
拡大部分
紙なのでそこにはさまざま印刷できます。私なりの主題として持っているイメージが刷り込まれています。薄っぺらい図像として、油絵具の間にサンドイッチされた構造をしています。
一方では物質性と一方では表象作用、そうした甘辛いソースで味付けされた作品です。
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